バルト三国と北欧諸国の協力体制

将来的には北欧に”正式に”所属したいバルト三国

バルト三国は北欧理事会の「オブザーバー」として参加していますが、北欧諸国かと言われるとまだまだその認識は少ないと思います。

旧ソ連からの独立以降、経済的にも政治的にも発展を続けるバルト三国は実は北欧理事会と密接な関係を築いています。バルト三国にはバルト議会(Baltic Assembly)という機関があり北欧理事会(Nordic Council)と毎年会談を行ない両地域間の結束や協力体制を強めています。

今回はバルト議会と北欧理事会についての関係を記事にしてみました。この記事を読めば「バルト三国」と「北欧」のイメージがきっと近づくはず!まずはバルト議会そのものについて触れてから深く解説していきたいと思います。なおバルト議会(Baltic Assembly)とバルト三国理事会(Council of the Baltci States)は異なる機関になります。

 

バルト議会(Baltic Assembly)

バルト三国間(エストニア・ラトビア・リトアニア)の国会での協力体制の調整を図る目的で設立。平等、相互利益、全会一致の原則に従い決議され他の地域や国際的な協力体制を発展させています。1990年12月1日にヴィリニュスで発足。1991年11月8日にタリンで規約が承認され公の機関となりました。


バルト三国で行われた独立運動"バルトの道"1989年8月23日の様子

  

バルト議会と北欧理事会の協力体制

北欧理事会との密接な関係は1990年にすでに始まっていました。北欧理事会の代表団は1990年の11月にバルト三国を公式訪問しバルト三国理事会の代表と面談しています。1991年9月にはバルト三国の各理事会の共同体制を構築することを援助する目的でバルト三国と北欧諸国の作業部会が発足しました。

1992年5月30日にはバルト議会と北欧理事会の間で議会の協力体制についての合意がリトアニアのパランガで調印され、民主制の発展と、環境保全、安全保障、文化と教育、貿易と市場経済、農業、通信、エネルギー資源の分野での協力が合意されました。

1997年9月26日にはバルト海域での安全維持という課題を共有している中で、バルト議会と北欧理事会はその結束をさらに深めるためにスウェーデンのカルマルで2回目の協定に合意しました。

この合意では政治、経済、法令、環境、社会、文化、教育の発展、さらには組織犯罪に対する安全や不法移民に対する対策を特に優先すべき分野として定めました。

こうした年月を経てバルト議会と北欧理事会は行政機関、委員会、政党、事務局といった組織での緊密な協力や調整を行うための活動を発展させてきました。

バルト三国がEUに加盟した後の2004年には、新たな協力体制が組まれました。これまでの大規模な合同会合から小規模な首脳会談に切り替え、共通の課題に対しての様々な会合が執り行われるようになりました。


北欧理事会 "Nordic Council"のロゴ 

 

地域的、政治的、経済的な結束

バルト諸国と北欧諸国は地域的にも政治的にも経済的にも繋がっており、共通の価値観や相互の信用と結束が基盤となっています。バルト議会と北欧理事会の協力体制を通して我々の地域での成長や繁栄を促すため、現在の安全保障、経済、環境、人口推移などの課題に共通の解決策を見つけるよう努めています。

一致団結し共同の政治的意思を示すことによってバルト諸国と北欧諸国は成長と発展を促すより多くの手段を獲得できるのです。安全保障や自国防衛、エネルギー資源、物流やインフラ、国内の治安維持、国境の管理、ヘルスケアや社会問題、バルト海の環境保全、研究や教育や文化は戦略的に重要な分野であり協調性のある行動が地域全体として有効なのです。

バルト議会と北欧理事会は、地域共通の課題をより明確に提示し、さらに包括的な地域の協力体制を発展させるため立法と行政の間で相互作用を強めています。これにより国際的な場面で「バルト&北欧」(”Baltic-Nordic”)のイメージを掲げ、協力体制の境界線を広げていくことにも寄与しています。

バルト&北欧の共通の立場、判断、課題はサステナビリティや発展に貢献し、バルト&北欧のパートナーシップや協力体制を世界へ示す強いメッセージとなるはずです。バルト議会と北欧理事会はバルト&北欧地域としてのビジョンをヨーロッパレベルで広げていくことに関心を持って活動しています。


年次のバルト議会と北欧理事会の首脳陣の会議の様子

 

2024年-2026年の展望

  • ウクライナの戦争被害への援助。
  • サイバーセキュリティと虚偽の報道、独裁的な統治体制によるプロパガンダによって増加するバルト&北欧社会への反発を含む包括的な外交と安全保障。
  • 特に東欧のパートナー国家に対する民主国家への移行支援。
  • バルト&北欧地域でのエネルギー資源の安全や持続性の維持。
  • 輸送、エネルギー、インフラの相互接続性やデジタル分野の共同運用。
  • 気候変動の緩和、持続可能な資源の能率的利用、循環的経済の実現。
  • バルト&北欧地域での高い教育学位への共通認識を含む教育システムの相互接続性。

バルト議会と北欧理事会の間での協力体制に関する2024年から2026年の優先順位の決定は、2023年9月22日にエストニアのタリンで行われた年次の首脳会談で調印されました。


2024年から2026年のバルト議会と北欧理事会での優先協力議題決定に署名する様子

 

バルト議会と北欧理事会の年次首脳会談

  • 第1回 2006年12月15日
  • 第2回 2007年12月3〜4日 オスロー(ノルウェー)
  • 第3回 2009年1月22〜23日 タリン(エストニア)
  • 第4回 2010年2月1718日 ヴィリニュス(リトアニア)
  • 第5回 2010年12月7日 キルッコヌンミ(フィンランド)
  • 第6回 2011年12月7日 レイキャヴィーク(アイスランド)
  • 第7回 2013年1月1718日 リガ(ラトビア)
  • 第8回 2014年1月2122日 コペンハーゲン(デンマーク)
  • 第9回 2014年12月12日 リセブ(ノルウェー)
  • 第10回 2015年12月7日 ヴィリニュス(リトアニア)
  • 第11回 2016年11月2829日 ケプラビーク(アイスランド)
  • 第12回 2017年11月27日 コペンハーゲン(デンマーク)
  • 第13回 2018年12月10日 エスポー(フィンランド)
  • 第14回 2019年12月9日 ハーデラン(ノルウェー)
  • 第15回 2020年12月14日 デジタル会議
  • 第16回 2022年4月2425日 ヘルシンキ(フィンランド)
  • 第17回 2022年9月46日 レイキャヴィーク(アイスランド)
  • 第18回 2023年9月2122日 タリン(エストニア)

 

北欧理事会 http://www.norden.org
バルト議会 https://www.baltasam.org

引用:”Cooperation with the Nordic Council” - Baltic Assembly
https://www.baltasam.org/cooperation/partners/nordic-council